ただいま、我が家はクチナシの花の盛りです。クチナシの魅力はなんといっても香り。世界三大香木の一つに数えられるほどの濃厚で甘い香りは最高のご褒美。特に、夜遅くにおうちに帰ってきて門を開けた時に、ふわりと香るのが癒しです。
まずはお写真を。
雨に濡れたクチナシの花です。
清楚な白い花も濃厚な香りも、今の時期だけのお楽しみ
八重咲きなので果実は出来ません。ただただ花にボリュームがあって綺麗です。
このクチナシは三年前に購入したものです。
今に至るまで、数々の苦難がありました。
クチナシ自体が気難しいのではなく、私の買ったクチナシの状態が特別悪かったから苦労したのだと思います。私は、スーパーの一角にある小さな園芸店でクチナシを購入しました。クチナシは小さなポットに植えられていて、背丈は15センチくらいでした。母が誕生日プレゼントとして買ってくれました。私は昔からクチナシの花が好きで、いつか育てると決めていたので、母におねだりしたのです。母からお金を貰い、自分でレジに持っていきました。お会計をしていると、レジのお兄さんが、クチナシの鉢を持ち上げて鉢の裏を見てこう言いました。
「水切れしてますね。すみません。おうちに帰ったら水をあげてください。」
お兄さんは少しはにかんだような笑顔を浮かべました。
鉢底からは、茶色い根が伸びているのがチラリと見えました。
これが後ほど悲劇を呼ぶのです。
家に持って帰ったクチナシにすぐに水をやり、8号の深めの鉢に植え替えました。
すると、元からついていた蕾が開き、かわいい花が楽しめました。
それ以外は特に変化がありませんでした。全く大きくなりません。夏が過ぎ、秋になって、何やら葉が黄色くなってきました。大きさは買った時と全く同じ。水はちゃんとやっているので、水切れではないはず。水のやりすぎ?いいや、土の表面が乾いてからやっています。肥料切れ?固形肥料を与えましたが、効果はナシ。オロオロする私を尻目にクチナシはみるみる弱っていきます。葉が黄色くなり、ポロポロ落ちます。晩秋、私は株を引っこ抜いて様子を見ることにしました。
株元に手を添え、鉢ごと逆さにしてゆすってみました。
すると、買ったときと全く大きさの根鉢がポロリと転がり出てきました。
周りの土と全く馴染んでいないので、根鉢の分だけキレイに抜け落ちました。
なんと、買ったときから今まで、全く根が張っていなかったのです。
根鉢は茶色の根で覆われていました。
カッスカッスの茶色い根。まるで屍のよう。
ん?根鉢の底面から何か白っぽいものが出てるぞ??
なんと、根鉢の底面の中心部分から、白い根がニョロりと伸びていました。一本だけ。
私は状況を察しました。
茶色の枯れた根が絡まって新しい根が広がることができず、わずかに見つけた隙間から辛うじてコンニチワしていたのです。
おそらく、お店で水切れを何度も繰り返したせいで、根鉢全体が死に、我が家に来てから伸びた根がうまく広がることができなかったのでしょう。
思えば、買ってきた時から根鉢は真っ茶色でした。ちゃんと見ていました。でも、当時は園芸に関してかなり無知だったので、根が死んでいるとは思わなかったのです。
今さらお店の管理を恨んでも時すでにお寿司🍣
緊急オペをします。
(母からアドバイスを貰いました。)
まず、茶色くなった根を清潔なハサミで切り取ります。そして、5号鉢に植え替えます。(普通の草花用培養土を使いました)蒸散を抑えるため、葉をだいたい切ってしまいます。(枝の先についている、緑色の若い葉は残します。ちょっとでも黄色くなっている葉はカット。)
あとは、不織布で株全体を覆い、明るい日陰に置いて終わりです。(朝だけ日が当たる場所で、かつ、他の植物の影になる場所に置きました。)
あとは見守ることしかできません。
寒い冬を乗り切れるか心配です。
そして、クチナシは冬をなんとか乗り切りました。
大きくもなりませんでしたが、葉を落とすこともなく、現状を維持しました。
そして、春になり、暖かくなると新芽が出てきました!
新芽はゆっくりと伸び、やがて立派な葉をつけました。
めでたしめでたし。
見事、クチナシは復活を遂げました。
オペの翌々年には花も咲きました。
そこから3年間、今に至るまで毎年花を咲かせてくれます。
クチナシが無事復活を遂げた理由を分析すると、以下の通りでしょう。
・古くなった根が絡まっていた部分を切り取ったことで新しい根が生育できるようになった。
・葉を切り取ることで蒸散が抑えられ、株の負担が減った
・元気そうな葉を少し残すことで、適度な光合成が続けられた
・不織布を被せることで、保温、保湿ができた
・明るい日陰に置くことで、過度な蒸散を抑えた。
ところが、復活の後も全てが順調とはいきませんでした。
主な問題は害虫と置場所です。
まず、クチナシには厄介な天敵がやってきます。
その名は、オオスカシバ
オオスカシバは、緑色のでっかい蛾の一種。
見た目がかわいく、おとなしいので、割と人気があります。
以下に動画があります。↓
確かに、成虫の見た目はかわいくて、私も昔から好きだったのですが、こいつの幼虫が厄介です。クチナシの葉を食べるうえ、擬態が上手くてなかなか見つけられません。
以下のサイトに色々と綺麗なお写真が載っております。幼虫の写真もあります。
幼虫は、体全体が緑色で、お尻にトゲのような出っ張りがついています。これが、噛られた葉にそっくり。あ、見つけた!と思っても、目を離すとすぐに見失ってしまいます。
卵は一ミリほどの大きさの緑色の卵で、これも見つけにくい!
うちの株は小さいので、まだ楽な方だと思います。大きい株になったら、目視で見つけて駆除するのは難しいでしょうね。
花が終わると、やつらのフィーバータイム。成虫が卵を産みにやってきます。知らないうちに卵が孵り、幼虫となって葉をむさぼります。定期的にチェックをするものの、しっかり見落として幼虫がでっかく成長します。後は、寒くなるまでやつらとの戦い。
昔はかわいいと思っていたオオスカシバも、今や宿敵。かわいいオオスカシバに会いたい方はクチナシを育てると良いと思います。
なんぼでも来てくれますよ。(皮肉)
株が小さいと、目を離したらほぼ丸坊主にされますよ。また、若い柔らかい葉を好むらしく、元気な芽から先に食いやがるのも厄介です。せめて古い葉を食えや。
それから、置場所も重要です。クチナシは強光を好みません。春先までは日光がガンガン当たる場所に出していても大丈夫ですが、5月ごろからは直射日光の当たらないところに入れてください。私の経験上、朝の日が当たるだけで大丈夫です。今年はうっかりしていて、6月のはじめまでガンガン直射日光の当たるところに出していたのですが、葉が一部黄色くなったり、茶色くなったりしました。置場所を変えたところ、症状は治まりました。暑くなってきたら強光は禁物。
それから、鉢の大きさは5号のままなのですが、問題なく育っています。また、肥料として液肥を定期的にやっています。
あまり鉢が大きすぎても良くないので、このままにしています。そろそろ一回り大きい鉢に植え替えたいな、とは思っていますが。でも、鉢が小さくても、株はコンパクトなまま、ちゃんと花を咲かせてくれます。あと、お花はすぐに茶色くなるので、摘んでしまうと良いと思います。雨に当てなければ結構保つように思います。(最初にあげた写真では花が雨に濡れちゃってます。基本的に軒下に入れていたのですが、たまたま軒下から出していた日に雨に降られ、ヤケクソになって写真を撮りました。)
以上、クチナシにはいくつかお世話のポイントがあります。
もう一度まとめます。
・オオスカシバに負けるな
・暑くなってきたら強光を避ける。(特に昼間~夕方の直射日光を咲ける)
・小さい鉢でもちゃんと育つ
・肥料として液肥をやれば、花は咲く
・茶色くなった花は摘む。(雨に当てなければ少し保ちます)
様々な苦労をしたからこそ、花が咲いたときの喜びもひとしお。花の時期以外は、幼虫をつまんで取るだけの苦痛に満ちた作業の連続です。
それだけに、花が咲いた時はお世話を頑張ってきたことへのご褒美をもらったような気がして嬉しくなります。
まさにアメとムチ。
いや、もっとアメくださいよ。
花の時期は短く、花のつくりも繊細で、すぐダメになります。
しかし、何にも勝る香り、花姿を目の前にすれば不満も吹き飛びます。
やっぱりクチナシが好きだー!!
というわけで、これからも大切にしていきたいと思います。オオスカシバと闘いながら。
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